※本記事は当サイト管理人が過去に別サイトで掲載していたものを転載・一部修正したものです。(元サイトは閉鎖予定)
2022年10月2日(日)に仙台高等専門学校広瀬キャンパスで行われた、高専ロボコン東北地区大会の観戦メモです。
高専ロボコンとは、全国高等専門学校連合会とNHKが主催する「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」のことです。
この記事はただの高専ロボコン好き文系出身女が、備忘録代わりに対戦結果と自分なりの考察をメモしたものです。そのため、ロボットに関する専門知識はありません。
また結果もベタ書き状態なので、見づらい・わかりにくい点はご容赦を。
さて、2022年の東北地区大会はコロナの影響で残念ながら一般客の観覧は見送り。
しかし久しぶりに各高専が会場に集まって競い合う、2年ぶりのリアル大会での開催となりました。
注目はやはり、全国大会出場常連校であり2018年の『Bottle-Flip Cafe』では全国優勝も果たした一関工業高等専門学校でしょうか。
でも毎年アイデアを凝らしたロボットがたくさん登場するので、どのチームも楽しみです。
2022年の大会のテーマ
ミラクル☆フライ 〜空へ舞い上がれ!〜
本記事はYoutubeでの東北地区大会LIVE配信、及びアーカイブの観覧により作成しています。
競技ルール
ロボットが紙飛行機を飛ばして5箇所の円形スポット、2箇所の滑走路、2箇所の筒状ベースに着地させる競技です。(競技時間2分30秒、1試合で赤・青に分かれての対戦形式)
紙飛行機が着地した場所によって得点が異なり、より高得点を獲得したチームが勝利します。
またすべての円形スポット、滑走路、筒状ベースに1機以上紙飛行機を着地させることに成功した瞬間にVゴール達成となり残り時間に関係なく勝利となります。
(上のリンクの動画 19:10〜 から、実際のフィールドを使ってのルール説明あり)
紙飛行機の数に制限はないので、数撃ちゃ当たるの大量に飛ばすスタイルか、狙ったところに着地させる精度を高めていくか、はたまた相手のチームが乗せた紙飛行機を自分のチームの紙飛行機で落とし妨害するか…?などなど、各チームの戦略とそれを実現する技術のせめぎあいも見ものです。
ルール詳細については、公式サイトで配布された以下のリンクのpdfからご確認ください。
東北地区大会出場校
- 秋田工業高等専門学校 (秋田)
- 一関工業高等専門学校 (一関)
- 仙台高等専門学校名取キャンパス (仙台名取)
- 仙台高等専門学校広瀬キャンパス (仙台広瀬)
- 鶴岡工業高等専門学校 (鶴岡)
- 八戸工業高等専門学校 (八戸)
- 福島工業高等専門学校 (福島)
全7高専及びキャンパスからA、Bの2チームが出場。合計14チームで争います。
全国大会出場枠は3つです。(優勝、推薦2)
なお本大会の解説は、東北大学大学院の田所諭教授です。
予選ラウンド 対戦結果・メモ
東北地区大会の予選ラウンドはA〜Dの4グループに分けて行われました。
各チームは予選ラウンドで2試合を戦い、勝敗数や得点数などで決勝トーナメントに進出する4チームが決定します。
下記記述内容は
・★マーク付チームが勝利
・「(チーム名):...」→ アナウンサーが説明する、事前の取材によって判明しているロボットの特徴。試合を見てわかった特徴。
・「メモ> …」→ 私が見て感じた感想、考察(妄想とも)
・「解説者談>...」→ 解説者による説明、考察(解説者がいない大会の場合、記述はありません)
としておりますが、厳密に分けて書いてるわけではないのでご了承ください。
第1試合
A:★八戸B vs 鶴岡B 0−0 (審査員判定 3−0)
八戸:ポイントは射出機構。ピッチングマシーンのように回転するローラーから紙飛行機を飛ばす。
鶴岡:左右2つに金属バネを使った射出機構があり、遠距離・近距離の打ち分け可能。1機ずつ飛ばすスタイル。
B:★仙台広瀬B vs 仙台名取B 0−0 (審査員判定 3−0)
仙台広瀬:確実に、正確にを目標に。高速連射で大量得点を狙いつつ、相手の飛行機に自らの飛行機を当てるカウンターでも相手の得点を防ぎたい。
仙台名取:一機一機丁寧に飛ばすために、射出機構は輪ゴムを利用したパチンコ方式。垂直・平行それぞれの角度の変更機構を搭載。ロボットがせり上がり高さを出して高い位置から得点を狙う。
解説者談>高いところから低いところに飛ばすのは飛行が安定するので、正しい戦略。
C:秋田B vs ★一関A 0−3
秋田:ポイントは射出機構。上下左右に射出の角度を調整可能。連射をコンセプトにマシンを作成。
解説者談>30秒で100機飛ばせる
メモ> 一気に飛ばせる数は多いけど、その分紙飛行機の装填にやや時間がかかる印
一関:こちらも連射がポイント。紙飛行機は一度に20機装填できる。1秒1機ペースで連射。紙飛行機自体にまっすぐ飛ぶ工夫がされてるらしい。
メモ>ロボットの動き、紙飛行機の充填が速い! 狙った場所へ飛ばす精度も高め。
解説者談>
紙飛行機の装填の時間も大きなファクター。それがいかに早くできるか。
D:鶴岡A vs ★八戸A 1−1(審査員判定 0−3)
鶴岡:複数種類の紙飛行機と、様々な飛ばし方ができる。射出はゴムを使ったパチンコ方式で1機ずつ飛ばす。長距離型、近距離型2種類の紙飛行機。丁寧に得点箇所に乗せる作戦。
八戸:大小2種類の紙飛行機を使う。紙飛行機はバネで飛ばす。バネを引っ張ったあと、圧縮空気で飛行機を押し出す。ほかのチームのVゴールを防ぎつつ大量得点を狙いたい。5機一度に飛ばす。
第2試合
A:★仙台広瀬A vs 仙台名取A 0−0 (審査員判定 3−0)
仙台広瀬:3種類ある射出機構のバリエーションの多さに注目してほしい。滑走路狙いのメイン射出機構、スポットに乗った相手の紙飛行機を落とすための輪ゴムを使った射出機構、ベースを狙う射出機構がある。
仙台名取:射出機構と装填機構を2つずつ搭載。相手チームの着地を防ぐ紙飛行機と、自分たちが得点するための紙飛行機2種類準備。花びらのような円形の装填機構(空気圧で飛行機を押し出す機構がうまく動かず今回は射出できず…)
解説者談>
紙は湿度、温度でうまくいかなくなる。非常にデリケート。
B:★福島A vs 秋田A 9−1
福島:見た目も大きく音も大きい迫力とローラー射出の力強さがポイント。1分間に90機の射出が可能。
メモ>難易度高めの横向きの筒、ベースAに初めて乗せた!しかも3機!
秋田:ベルトとモーター、2種類の発射機構と3種類の紙飛行機を使用。正確性と幅広い攻撃でVゴールを目指したい。
C:★一関A vs 福島B 2−2
一関:一足先に2試合め。2試合目も安定した動きで着実に得点を重ねる。
福島:自分たちのかっこいいを実現したい。試合は勝ちに、見る人を魅了させる両立を目指したい。リンク機構を使って人が紙飛行機を飛ばすときの動きを再現。連射可能
解説者談>
高いところから飛ばす機構が、人が紙飛行機を飛ばすときの動きを再現している。
勝敗についての審判からの説明>>
一関は紙飛行機を3箇所のスポットに乗せたが、うち1機がルールで規定された紙飛行機の基準を満たしていなかったため、その分の得点が認められず試合終了時で2−2。
同点の場合、より多くの場所に紙飛行機を乗せたチームが勝利となるため、
・一関:2箇所のスポットに1機ずつで2点
・福島:1つの滑走路に2機で2点
の比較となり、一関高専の勝利。
D:★八戸A vs 一関B 0−0(審査員判定 3−0)
八戸:こちらも2試合め。一度に5機飛ばす。八戸のイカをイメージした紙飛行機。
一関:一度に88機、1試合で440機飛ばすことが理論上は可能。装填機構は板にストローをひたすら刺した剣山のようなもの。ストローに挟むように飛行機を装填する。板ごとバネで押し出して、押す力で飛行機を飛ばす。
メモ>飛ばすというか、落とすというか…。笑 でも発想面白い!
第3試合
A:★鶴岡B vs 仙台名取A 0−0(審査員判定3−0)
鶴岡:活動時間が限られていたため、簡単に作ることができる材質・機構に工夫した。左右2つに射出機構があり遠近距離使い分けることができる。
メモ>スタートしてすぐ出ていったけど、最初の射出まで約1分。一度の装填で飛ばせるのが2機なので慎重に飛ばしたいのかも?
仙台名取:大きい飛行機でベースを塞いで相手チームの紙飛行機の着陸を防ぐ作戦もできる。2試合めも射出がうまくいかず…。
解説者談>
マシントラブルを減らすにはいかに時間をかけて潰していくかが通常だが、今回はコロナで夏休み部活ができない、早く帰らないといけないといった事情がある高専もあり、最後の詰めまでいけなかったのでは。学生さんたちは悔しい思いをしたと想像する。
B:仙台名取B vs ★秋田A 0−0 (審査員判定0−3)
仙台名取:チーム全員で一機一機丁寧に飛ばしていきたい。
解説者談>空気圧シリンダーで押し出して飛行機を飛ばす。この方式自体が条件の変化に弱い性質を持っているのかも。
秋田:ロボットの魅力を最大限見ている人に伝わるように全力を尽くしたい。
メモ>飛行機の軌道はとてもきれい。試合を重ねるごとに狙ったところの近くに落とす精度は上がってきている様子。
C:★福島B vs 秋田B 4−1
福島:自分たちのかっこいいを実現したい。紙飛行機は1機ずつ、連続で射出可能。滑走路に3つ乗せた。
メモ>わりと遠くの滑走路、ベースのあたりを狙う作戦?(でも手前スポットにも乗ってた)
秋田:戦略は圧倒的な連射力。2つの射出機構から手前に大量連射で紙飛行機を飛ばす。
メモ>手前に大量に飛ばす傾向。角度を変えて低い軌道で遠くにも飛ばせるみたい。動くとどよめきが起きる…。笑
D:一関B vs ★鶴岡A 0−0 (審査員判定1−2)
一関:大量射出が持ち味。装填機構が板+ストローのチーム。
メモ>1発めの射出で紙飛行機がテイクオフゾーンに大量に落ちてしまうと、2発目以降の射出の際落下した紙飛行機が邪魔でロボットの進行の妨げになってたような。
解説者談>紙飛行機を射出するとき、初速はあるが装填機構のストローに引っかかって遠くまで飛ばないように見える。
鶴岡:一度に装填できるのは1機。紙飛行機の形で飛距離を調整。
第4試合
A:★八戸B vs 仙台広瀬A 0−0 (審査員判定3−0)
八戸:これまで蓄積してきたアイデア、知識、経験で見ている人をあっと驚かせるロボット作りを目指したい。
メモ>スタートから射出までが20秒くらいで早め!ロボットの動きも素早い。
解説者談>射出は連射を見越してのローラー方式を採用。が、装填の機構がうまくいかず連射まではたどり着けなかったそう。
射出の速度は速いが、下に向けて射出してしまっているのでうまく遠くまで飛んでいない。そこの調整ができれば決勝ではさらなる得点が見込めるかも。
仙台広瀬:安定した得点の獲得、楽しんでもらうパフォーマンスが狙い。滑走路狙い、相手の紙飛行機を落とす、上空のフィールドを大きく広く使う、この3つのポイントで戦っていきたい。
メモ>トラブルか、スタートゾーンからスタートできず…。
B:仙台広瀬B vs ★福島A 0−0 (審査員判定0−3)
仙台広瀬:装填部分が少し揺れながら装填される。
福島:ベースAに入るかどうかは神頼み!斜めの角度からとにかく連射でベースA狙い
解説者談>飛行ルートが右曲がりの傾向にあるような?撃ち出している箇所の傾きや紙飛行機の形でそうなっているのかも。(のちのインタビューでメンバーからは「左右による違いはない」とのこと)
決勝トーナメント
準決勝
第1試合:★福島A vs 八戸B 3−0
福島:開始10秒ほどでベースAに得点。終盤、テイクオフゾーンの中央にマシンが移動し遠くのベースBを狙う動きもあったけど、そちらは不発のまま試合終了。
メモ>基本はベースAの3点狙い?あまりほかの場所は狙っていないような。
八戸:何かしらのトラブル?が発生して予選のような動きができなかったもよう。
解説者談>たくさん打つ戦略がこのルールには合っているように思う。
第2試合:八戸A vs ★一関A 1−3
八戸:定荷重バネを用いた装填装置が3つ。10機から20機セットできる。大小の紙飛行機を準備。Vゴールを防ぐ戦略も用意している。射出は1回で5機同時。
一関:手前のスポットを確実に狙い、得点を重ねる戦略。紙飛行機は1つの機構から同一方向に連続射出可能。
エキシビションマッチ
秋田B vs 福島B 1−3
秋田:音がでかい!一気に射出!迫力!
メモ>充填するとき装填機構が下向くの、本体がでかいからちょっとかわいい…。
福島:上部にある射出機構は高い位置から手投げのように飛行機を飛ばす。
決勝戦
福島A vs ★一関A 0−1
福島:やっぱりベースA狙いは運要素が強い?今回は1機も入らず、得点ならず。
メモ>ベースAを狙いつつ、おこぼれで滑走路とかにも乗せられると良いのだけど…。(遠くを焦点に飛ばしているように見えるので、手前のスポットには乗せづらそう)
一関:ロボットの動きや射出の精度に安定感がある。充填に戻るときの動きが速い。
メモ>毎試合同じ高クオリティの試合ができていた印象。ただ一関Aは毎回試合終了時に審判による紙飛行機の確認が入るので、紙飛行機の形はルールギリギリのところを攻めてるのかも。(ほかのチームよりも全体的に細長い紙飛行機の印象)決勝戦も3機乗せたものの、1つしか得点が認められなかった。
解説者による総評(要約)
今回はルール自体がとても難しい。紙飛行機の気ままさをどう抑えるかが大きなポイントだった。
多くのチームが数によって確率は低くても得点を上げられる工夫をしていたが、それだけではなく紙飛行機の気ままさを抑える工夫がたくさん成されていた。(折る際のミリ単位での工夫、曖昧性がなくなるような折り方、翼の不安定さをルールの範囲内で減らす、ローディング中に紙飛行機の形が崩れないといった試行錯誤)
また射出機構を制御する、目に見えないアルゴリズムやタイミングといった工夫も非常に重要。それは膨大なデータをとり、実験を繰り返し改良を重ねてきたのが実のところ。
過去に優勝したチームの多くは2ヶ月間はマシンの調整、改良、練習を重ね確実性の上昇を徹底的にやってきた。
今回はコロナでそれがなかなかできないチームも多かったと思う。それがもどかしく悔しい思いをしたチームもあると思う。その中で精一杯頑張ったことは素晴らしいこと。すべてのチームの皆さんにエールを送りたい。
結果
- 優勝 一関工業高等専門学校A 「Artemis」
- 準優勝 福島工業高等専門学校A 「紙頼み」
- アイデア賞 秋田工業高等専門学校B 「太平」
- 技術賞 福島工業高等専門学校B 「数グラムのロマン飛行」
- デザイン賞 八戸工業高等専門学校A 「FRYERS」
全国大会出場チーム
東北地区大会 感想
出場チームの皆さん、おつかれさまでした!そして全国大会出場決定の3チームの皆さん、おめでとうございます!
東北地区大会は全国に先駆けて開催され、準備期間も他の地区に比べ短いので大変だと思います。さらにまだまだコロナの影響もあり、思うように集まれなかったり練習できなかったチームも多かったとのこと…。
でもその中できちんとルールに則り、試合ができるロボットを作り上げてくるのは本当に素晴らしいです!
優勝した一関Aチームは「安定感」が素晴らしかった!紙飛行機が規定に合わず得点が無効になることが多かったので、全国大会に向けては紙飛行機の調整も必要?紙飛行機を何機乗せても1点にしかならないスポットに複数機乗せるのも、最初は「もったいないな〜」と思っていたのですが、紙飛行機の形で得点無効になる可能性があるのなら、複数乗せておくのも戦略的にありだな!と思いました。
紙飛行機を全国大会に向けてルールに合致するようきっちり仕上げてくるのか、もしくはあくまでルールギリギリを攻め続けるのか、楽しみです。
紙飛行機の装填も早く機動性も高いので、全国大会でも活躍を期待しています!
福島Aチームは「ベースAに入るかは神頼み」とおっしゃってましたが、ベースA方面に向けて確実に大量に射出できる技術はすごい。
「ベースAとかどうやって入れんのよ」と大会前は思っていましたが、入った瞬間「おぉおお」と声出ました。入るもんなんやね…。9点入った最初の試合はめちゃ気分上がりましたよ…。
秋田Bチームはでっかいロボットがでっかい音たててパワフルに動くの、それだけで見てて楽しい!笑 上でも書きました紙飛行機を充填するとき装填機構がうなだれるみたいに下向くの、なんかかわいいのよね。
全試合を見終わって思うのは、数撃ちゃ当たるの大量射出方式でいくか、狙ったところに紙飛行機を飛ばす確実性を追求するか、どっちの戦略取るか悩ましいよね〜!というところ。
大量に飛ばすには大量に紙飛行機を装填できる機構が必要、でもそうなると重さが…とか、紙飛行機なくなったときの再装填に時間かかる…とか。
あと紙飛行機を1枚ずつ送り出す仕組みも必要になるし。
1機1機確実に狙ったところに飛ばす丁寧方式は、大量射出戦略チームとの対戦だと弾幕張られてるみたいになって精度一気に下がりそうだよな〜とか。
その中でVゴールを狙うには、ロボットの移動スピードや装填時間の短縮が必要になりそう〜とか。
また紙がさぁ…湿度だのなんだので扱いづらいよね…。
まぁ素人が適当に思いを巡らせているのでトンチンカンなこと言ってるかもしれませんが、高専ロボコンは「これどうやって解決すんの?」な課題を毎回毎回「なるほど!!」なアイデアで解決するチームがたくさん出てくるのも楽しみなところ。
全国大会出場が決まった3チームの皆さん、国技館での試合も楽しみにしています!