Daisy Bellの憂鬱

日々の出来事の記録(秋は高専ロボコン)

2023年秋、とかくこの世は産みづらい〜出生前検査するか否か(妊娠初期 その3)

前回記事はこちら↓

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photo by Jess Bailey(https://unsplash.com/ja/@jessbaileydesigns)

※この記事は妊娠・出産に対しあまり意識が高くない筆者が自然妊娠した際の体験記です。人によってはその脳天気さ、意識の低さが不快・不愉快に感じることもあるかと思うので、デリケートな状況にある方はここで引き返してくださいませ。

 

お金の話しにビックリしつつも「まぁそんなもんか…」と納得したところで、出産までの大まかな流れを教えてもらう。

そして看護師さんから「現時点でご希望かはともかく、ソラリスさんの年齢だと一般的にどうしても色んなリスクが上がってくるから、少しでも選択肢にあるのならちょっと丁寧に説明したいのだけど…」と告げられ、とある検査の説明を受ける。

出生前検査である。

出産費用については夫婦共々若干無頓着であったが、出生前検査については妊娠する前から夫婦で話題にしていたし、妊娠検査薬で陽性が出たあとも少し話し合っていた。

夫婦の意見としては、「夫婦二人とも40歳超えている分障害児が生まれるリスクは上がるだろうし、年齢的にも明らかに障害があるとわかっている子を育てるのも身体的・経済的に厳しいのでは」「病院で詳細を聞いて、検査することも検討していこう」といった感じだった。

「ちなみに今の時点で検査を受けたいとか、絶対に受けたくないといったご希望はある?」

「あ、年齢が年齢なので、検査を受けることも考えてはいて…」

「そうなんですね。じゃあ、説明させていただきますね」

看護師さん曰く、一口に出生前検査といっても色々な種類があり、

などがある。それぞれメリット・デメリットがあり、(説明を受けた中で私が記憶している範囲だと)

クアトロテスト → 母体血清マーカー検査の一つ。比較的安価に受けられるが、年齢が検査結果に反映されるため、胎児に問題がなくても(40歳を超えていると特に)染色体異常の可能性が高めに出る。

NIPT → 妊娠中の母体の血液から染色体異常を調べる。安全性は高く精度も高いが、費用も高い。実施施設にもよるが15万〜20万くらい。

羊水検査 → 羊水を直接採取して検査する。お腹に直接針を刺して羊水を採取するため、稀ではあるが検査による流死産の可能性がある。夫婦いずれかでも染色体異常の保因者、高齢出産、クアトロテストやNITPなどで胎児の染色体異常の可能性を指摘された場合などに行われる確定診断検査。

といった感じ。

「うちでできるのはクアトロテストだけなんだけど、さっきも言ったとおりほかの検査と比べると年齢が検査結果に反映されがちな検査なんですよね…。実際は赤ちゃんに特に問題がなくても、年齢要因が強く出て陽性になったら、本来必要なかった不安やストレスを抱えることになるかな…と。こちらとしては、ソラリスさんの場合は検査をご希望なら最初から精度が高いNIPTを検討した方がいいんじゃないかなぁと思います。でももちろんクアトロテストが無意味なわけではないので、そこは考え方や費用も含めて判断してもらえれば」

なおクアトロテストとNIPTの価格差、10万円以上…。まぁこの際値段はともかく。

「念のため」とか、「身体・経済的なことを考えて」とか、実際に現実に直面するまではそれっぽい理屈となんとなくの感情で「まぁ受けるのもありだよなぁ」と思っていた。
けれどもいざ対峙せざるを得ない状況に立たされると、状況と感情の折り合いをつけるのもなかなか難しい。

つまりは「障害があるとわかったらどうするのか」という一歩踏み込んだ議論を本気でしなければならない。

・「明らかに障害があるなら今回は諦めよう」(=人工妊娠中絶する)

を選ぶのか、

・「障害があっても産んで育てていく」

を選ぶのか。

でも障害があっても産むのなら、そもそも検査自体やらなくていいんだよなぁ…(事前にわかっていることで準備できることはたくさんあるけれど)。

そして出生前検査は、(母体保護法によって22週以降はいかなる理由があっても人工妊娠中絶を行うことができないこともあり)受けるならだいたい15週前後までに、検査結果が出るまでの時間や確定診断検査に進む可能性も考えると遅くとも18週頃までに受けるように指示される。

NITPは10週頃から受けられるとはいえ、ある程度妊娠の可能性を意識しているカップルであれば妊娠2ヶ月頃にはおそらく病院へ行くだろうし、妊娠が成立していればそのタイミングで胎嚢と心拍を確認するだろう。
そこから数週間経ってからの出生前検査となる。そしてもちろんその間もお腹の中のヒトはどんどん育っていく。

最初見た時はただの袋とドクドク動く細胞の塊でしかなかったものが、出生前検査を受ける頃には「頭と体と、なんか手っぽいものは見える」状態にまではなっているのだ。

これは私の個人的感覚及び感想だが、胎嚢と心臓くらいならまだ「細胞だー」という感じだが、頭と体と手まで見えてくると、一気に「超初期のヒト」という感覚になる。

超初期とはいえヒトっぽい形になりつつあるヒトを、検査結果によって中絶するという判断を私は下せるのだろうか…。

とはいえ、出生前検査の結果で人工妊娠中絶を選択した先人たちを批判するつもりは一切ない。
色々な事情があるし、検査結果を判断材料としてそのまま受け入れた人、悩みに悩んだ末に中絶した人、判断材料としてあっさり受け入れたことにしないと心の均衡が保てなかった人、100人いれば100通りの事象だ。

そして検査で障害があるとわかっても産んだ人達も、その後どうなったか、どう思ったのか、それは他人が闇雲に妄想したり首を突っ込んだりする問題ではないと個人的には思う。

「この世の中に障害を持って生まれてくること自体本人も家族も苦しい、だから回避すべき」という意見も、「どんな子どもでも自分の子ども、受け入れてやっていく」という意見もどちらも理解できるが、どちらの方が優れているか、優しいかは私にはわからないし、他人の選択を神格化するつもりもない。

本来の話題とのズレが大きくなってきそうなのでこれ以上細かくは言及しないこととするが、まぁとにかく、なかなか苦しく、考えても考えても判断に迷う問題である。*1

というわけで、看護師さんの話しを聞き若干考え込んでしまったのだが、看護師さんから
「もう少し赤ちゃんが大きくなったら、超音波検査でもダウン症の可能性は指摘できるんですよ。だいたい11週くらいのエコーで赤ちゃんの首の後ろにむくみが確認できると、染色体異常の可能性ありとして妊婦さん報告するの。とはいえむくみがあっても染色体異常によるものじゃないケースも多いんです。出生前検査を受けるか受けないか自体に迷っているなら、そのタイミングを待って判断するのもいいかもしれないですね」

と言われ、「ほーほー、じゃあそうします」とあっさり答える。要するに、問題の塩漬けである。
胎嚢と心拍確認から出生前検査の検討まで、もう頭の回転と情緒がついていかなかったのよこの日は…。(もちろん看護師さんは「おうちに帰ってからゆっくり休んでから、渡した資料とか見てじっくり考えてね!まだ時間はだいぶあるから!」と優しく諭してくれました)

そしてその後、最終的にどうしたかというと、11週頃のエコーで「むくみはなさそうだねー」と言われたので結局出生前検査自体受けなかった。

出生前検査をしても事前にわかる障害は限られているし、出生前検査で陰性となっても検査ではわからない障害が出てくる可能性はゼロではない。
それこそこの先数カ月で私がすっころんだりしてお腹の打ち所が悪かったら…とか、もう不安材料をあげればキリがなく、だったらもう「とりあえず、そのまま産んでみよう」という結論に到った。

この問題に関しては「案ずるよりも産むが易し」とは言い切れないが、とりあえず、何かあってから考えることとしたのだった。

*1:まぁそもそも40歳超えて妊娠するというハイリスクを犯すこと自体自己中で考えなしだという方もいるだろう…