Daisy Bellの憂鬱

日々の出来事の記録(秋は高専ロボコン)

[高専ロボコン2024]関東甲信越地区大会 観戦メモ(2024.09.22開催)

photo by Romain HUNEAU(https://unsplash.com/ja/@honni)

2024年高専ロボコン関東甲信越地区大会のネット観戦メモです。

高専ロボコンとは?

全国高等専門学校連合会とNHKが主催する「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」のことです。 

official-robocon.com

高専ロボコンでは毎年違った競技課題が与えられ、全国の高専チームが競い合います。

2024年の競技課題は?

『ロボたちの帰還』

 今年の競技のミッションは、「着地」、そして「回収と帰還」です。
前半は「着地」。ロボット1がロボット2を飛ばして、エリアCに着地させると得点です。
一番高い得点の着地スポットは、エリアAからの距離が5mにもなります。
後半は「回収と帰還」。ボールを回収してロボット1に届け、さらにボックスを持って、エリアBを越え「帰還」します。ロボット2が自力で戻るのもよし、ロボット1と連携&協力するのもよし。
まさにアイデアの見せどころとなります。競技時間は2分30秒です。

ルールブック(7月9日修正版)P.2より引用

 

本記事は、Youtubeでの全国大会LIVE配信及びアーカイブ視聴により作成しています。

www.youtube.com

 

2024年の競技課題

『ロボたちの帰還』

開催概要

日時:2024年9月22日(日)
場所:千葉ポートアリーナ
担当校:木更津工業高等専門学校

審査員:
千葉大学大学院工学研究院 教授 並木明夫氏
千葉市科学館 プロジェクトアドバイザー 大山光晴氏
NHK千葉放送局 副局長 はらとしき氏

実況:NHK長野放送局 米澤太郎氏
解説:京都大学大学院工学研究科 講師 川節 拓実氏

競技ルール

公式配信動画の 51:00頃 から実際のフィールドを使ってのルール説明があります。

詳細については以下の資料をご確認ください。

最新ルールブック・FAQ

最新ルールブック(2024.07.09)

フィールド図面

FAQ Ver.4(2024.08.09)

以下に文字ベースでも基本的なルールを記述します。

フィールド
競技フィールドは長方形でA,B,Cの3つのエリアに分かれており、以下のようになっています。
A:スタートゾーン含む。
B:ロボットの接地不可、上空への侵入は可。(AとCに挟まれたこのエリアBを如何に飛び越えるかが今回のポイントの1つ)
C:オブジェクトゾーン、円形の着地スポット含む。

ロボット
各チームはロボットを2種類(ロボット1、ロボット2)用意します。
各ロボットの役割は、
ロボット1:エリアAを自由に移動できる。ロボット1はエリアAから、ロボット1自身の動力によってロボット2をエリアCに飛ばす。
ロボット2:ロボット1から射出後、エリアCに着地する。ロボット2はエリアCに着地後、オブジェクトゾーンにあるオブジェクト(ボール、ボックス)を回収し、エリアBに接地することなくエリアAのロボット1にボールを届ける、もしくはロボット2自身とともにエリアAにボックスを持ち帰る。なおロボット2はエリアCで複数台活動可能だが、ロボット1が一度の射出で飛ばせるロボット2は1台のみ。

ミッション
以下の3つのミッションの達成を目指します。
着地:ロボット2がエリアBを飛び越えエリアCの着地スポットに着地する。
ボールの回収:ロボット2がエリアC内にあるボールを回収し、エリアAにいるロボット1に届ける。
ボックスを保持したロボット2の帰還:ロボット2がエリアC内にあるボックスを回収し、保持したままエリアAに帰還する。

得点
着地:エリアCにロボット2が着地した場所に応じて得点を獲得できる。ただし得点となるのは最初の着地のみ。(ロボット2を複数台飛ばしても、着地得点は最初の1台分のみ)着地スポットは円形となっており、円の中央から100点、40点、10点、着地スポット以外は1点となる。複数の得点圏に跨がって接地した場合は、得点の少ない方が採用される。

ボール:競技終了時にロボット1が持っている、またはチームがフィールド内に保管している*1ボールが得点となる。ロボット2から1への受け渡しの際、ボールがエリアBに接地すると得点は無効となる。1個につき10点。全部で7個。

ボックス:ボックスを保持した状態のロボット2がエリアA(上空含む)に完全に入った時点で得点となる。エリアCからAへの移動の際、ロボットおよびボックスがエリアBに接地した場合は得点は無効となる。1個につき60点。全部で3個。

勝敗
以下の順に勝敗を決定する
1)より早くすべてのミッションを完了、すなわち着地得点100点、ボール10点×7個、ボックス60点×3個の合計350点満点を達成したチームを勝利とする*2
2)競技終了時に得点の高いチームを勝利とする
3)両チームの得点が同点の場合は以下の順で勝敗を決定する。
 a)より多くのボックスをエリアAに持ち帰ったチーム
 b)より高い得点の着地スポットに着地したチーム
 c)上記で決定できない場合は審査員判定とする

その他
ロボットがエリアBまたはフィールド外に接地した場合、相手フィールドの上空に侵入した場合、相手チームの競技進行を妨げた場合などは強制リトライとなる。

以上のルールをベースに、青ゾーンと赤ゾーンに分かれて対戦形式で試合を行います。競技時間は2分30秒です。

関東甲信越地区大会 出場校

※入場順、括弧内は試合中の略称

高専・各キャンパスからA,Bの2チームが出場、合計20チームで争います。
全国大会出場枠は4つです。(優勝1、推薦3)

試合結果

予選ラウンド

第1試合

Aグループ 長野A VS 産技荒川B 試合動画
ロボットについて:
長野A エリアCで発動するロボットはすべてまるい球体。球体はどの面から落ちても衝撃を吸収しやすく動きがかわいいから採用。材質は主にザルを使っていて軽いので着地で衝撃を与えられてもなかなか壊れない。
産技荒川B 最大の見どころはエリアBの上にかける橋のロボット。重さはおよそ5キロで庭師の脚立のよう。
結果:1-1 (審査員判定 1-2) 産技荒川Bの勝利
 長野A:着地1点
 産技荒川B:着地1点

Bグループ 産技品川A VS 東京B 試合動画
ロボットについて
産技品川A 2019年以来の全国大会出場を目指す。こだわりの関節によってコンパクトにたたまれた橋が、箱回収ロボットから切り離されてパタパタと展開する様子に注目してほしい。
東京B 開発が難航、その中で導き出したのは着地にこだわる作戦。とても小さな軽いロボットを100点のスポットにめがけて着地させる。
結果:0-40 東京Bの勝利
 東京B:着地40点

Cグループ 木更津A VS 小山B 試合動画
ロボットについて:
木更津A ペンギンの装飾のロボット。ロボット2が飛びオブジェクトを持って戻ってくる様子を、ペンギンが飛んで餌を持って戻ってくる様子に見立てた。高速で走る箱回収ロボットがジャンプ台で勢いよく帰還する動きはまさにペンギンそのもの。2016年以来の全国大会出場を目指す。
小山B 去年地区大会で優勝した3選手がそのまま今年も出場。
結果:10-120 小山Bの勝利
 木更津A:着地10点
 小山B:着地40点、ボール20点、ボックス60点

Dグループ 群馬B VS 小山A 試合動画
ロボットについて
群馬B 帰還方法は走り幅跳び方式。箱を受けとったロボットが走り幅跳びのように勢いよく戻ってくる。
小山A 羽ばたくモモンガをイメージしたロボット。オブジェクトを回収するロボットとジャンプ台のロボットを使って大ジャンプを繰り広げる。勢いよく展開するジャンプ台にも注目。
結果:0-110 小山Aの勝利
 小山:着地40点、ボール10点、ボックス60点

Eグループ サレジオA VS 茨城B 試合動画
ロボットについて
サレジオA 5キロ近い重さの橋をパワフルに飛ばすところが最大のアピールポイント。
茨城B サーカスのテント(ロボット1)から猿のロボットが3匹放たれる。この3体のロボットがボックスを回収、火の輪くぐりのようにジャンプして帰還する。成功の鍵を握るジャンプ台ロボットの製作は特に苦労した。
結果:0-40 茨城Bの勝利
 茨城B:着地40点

第2試合

Aグループ 茨城A VS 長岡A 試合動画
ロボットについて
茨城A コンセプトは銀河鉄道。エリアAを地球、エリアBを宇宙に見立てている。見どころはエリアCからAまで橋で繋ぐロボット。橋には配線工事などで使うケーブルキャッチャーを採用している。軽くて強い素材はないか探していたところ、エアコンを取り付けに来た業者の人がケーブルキャッチャーを使っていたのを見て使うことになった。橋の展開に注目してほしい。
長岡A 城から謙信が飛び出てボックスを回収する作戦。ボックスを戦略的に取って大量得点を目指す。
結果:100-40 茨城Aの勝利
 茨城A:着地100点
 長岡A:着地40点

Bグループ 群馬A VS 木更津B 試合動画
ロボットについて:
群馬A 注目はロボット1。引っぱったバネが戻る力を使ってサッカーのスローインのようにロボット2を投げる。エリアBに橋をかけて帰還する作戦で、その橋がおよそ6kgと重いためこの投げ方を採用した。
木更津B SLモチーフをモチーフにしている。エリアBの上に橋をかけてロボットが帰還する作戦。橋の材料には、魚釣りに使う伸縮するタモの柄を使っている。後ろから空気をいれて伸ばして橋にする。
結果:0-0(審査員判定 3-0) 群馬Aの勝利

Cグループ 長野B VS 産技荒川A 試合動画
ロボットについて:
長野B エリアCで活動するロボットは走り幅跳び型。引っぱった輪ゴムが元に戻る力で床を蹴ってジャンプし、帰還を目指す。動力の輪ゴムは20本にまとめた1セットを16セット使っている。
産技荒川A コンセプトは織姫と喧嘩した彦星が織姫によって投げられてしまい、織姫に謝るために貢ぎ物を持って帰る…というストーリー。
結果:1-70 産技荒川Aの勝利
 長野B:着地1点
 産技荒川A:着地40点、ボール30点

Dグループ サレジオB VS 東京A 試合動画
ロボットについて:
サレジオB コンセプトはいい意味で単純なロボットを使うこと。複雑な仕組みを使うと着地の衝撃で壊れてしまうことを懸念してシンプルに考えた。ボックスを回収するロボットは虫取り網のような仕組みを180°動かすことで着地したときの体勢に影響されないように工夫している。
東京A 最大の特徴は最初に飛ばすボックスを回収するロボット。着地するときには重心のバランスを工夫して起き上がりこぼしのように着地点に留まることができる。
結果:1-10 東京Aの勝利
 サレジオB:着地1点
 東京A:着地10点

Eグループ 長岡B VS 産技品川B 試合動画
ロボットについて:
長岡B 複数を合体させたロボットを発射し、着地後に分離させる。ボールの受け渡しはロボットで橋を架ける。
産技品川B エリアCで動くロボットはこの地区唯一のゴンドラ型。ボールを回収したらロボット1に向けて磁石のついたワイヤーを発射、ボールを回収した仕組みを切り離して、今度はワイヤーと繋げてゴンドラのようにロボット1にボールを渡す。
結果:10-0 長岡Bの勝利
 長岡B:着地10点

第3試合

Aグループ 長野A VS 長岡A 試合動画
結果:10-10(審査員判定1−2) 長岡Aの勝利
 長野A:着地10点
 長岡A:着地10点

Bグループ 産技品川A VS 木更津B 試合動画
結果:10-0 産技品川Aの勝利
 産技品川A:着地10点

Cグループ 木更津A VS 長野B 試合動画
結果:70-1 木更津Aの勝利
 木更津A:着地10点、ボックス60点
 長野B:着地1点

Dグループ 群馬B VS サレジオB 試合動画
結果:0-0(審査員判定3−0) 群馬Aの勝利

Eグループ サレジオA VS 産技品川B 試合動画
結果:0-0(審査員判定3−0)サレジオAの勝利

第4試合

Aグループ 産技荒川B VS 茨城A 試合動画
結果:10-100 茨城Aの勝利
 産技荒川B:着地10点
 茨城A:着地100点

Bグループ 東京B VS 群馬A 試合動画
結果:40-0 東京Bの勝利
 東京B:着地40点

Cグループ 小山B VS 産技荒川A 試合動画
結果:60-110 産技荒川Aの勝利
 小山B:着地40点、ボール20点
 産技荒川A:着地100点、ボール10点

Dグループ 小山A VS 東京A 試合動画
結果:40-40(審査員判定3−0) 小山Aの勝利
 小山A:着地40点
 東京B:着地40点

Eグループ 茨城B VS 長岡B 試合動画
結果:100-10 茨城Bの勝利
 茨城B:着地100点
 長岡B:着地10点

決勝トーナメント

準々決勝

茨城B VS 東京B 試合動画 
結果:40-10 茨城Bの勝利
 茨城B:着地40点
 東京B:着地10点

準決勝

小山A VS 産技荒川A 試合動画
結果:20-10 小山Aの勝利
 小山A:着地10点、ボール10点
 産技荒川A:着地10点

茨城A VS 茨城B 試合動画
結果:0-40 茨城Bの勝利
 茨城B:着地40点

エキシビション

長野A/木更津A/小山B/群馬A エキシビション動画

決勝

茨城B VS 小山A 試合動画
結果:10-50 小山Aの勝利
 茨城B:着地10点
 小山A:着地40点、10点

終結果・各賞

優勝 小山工業高等専門学校 Aチーム

準優勝 茨城工業高等専門学校 Bチーム

イデア賞 都立産業技術高等専門学校 荒川キャンパス Aチーム

技術賞 小山工業高等専門学校 Bチーム

デザイン賞 長野工業高等専門学校 Aチーム

特別賞 

 長野工業高等専門学校 Bチーム
 木更津工業高等専門学校 Aチーム
 サレジオ工業高等専門学校 Bチーム
 
都立産業技術高等専門学校荒川キャンパス Bチーム
 群馬工業高等専門学校 Aチーム
 東京工業高等専門学校 Aチーム
 長野工業高等専門学校 Aチーム
 長岡工業高等専門学校 Bチーム

全国大会出場校

[優勝]小山工業高等専門学校 Aチーム

[推薦]木更津工業高等専門学校 Aチーム

[推薦]都立産業技術高等専門学校 荒川キャンパス Aチーム

[推薦]茨城工業高等専門学校 Aチーム

関東甲信越地区大会 感想

高専ロボコン史上最難関とも言われる(ここ数年毎年言われてる気もするけど。笑)今回の競技課題、正直始まる前は「ロボット飛ばしてさらに着地先で動くとか、ぶっ壊れるロボット続出じゃないの…?」と思っていましたが、そこはさすがの高専ロボコン生のみなさん。
素材やロボットの形態、重心バランスなど様々な観点から工夫を凝らし、初っぱなの地区大会であるにも関わらず見応えのある試合ばかりで面白かったです!

優勝した小山高専Aチームの皆さん、おめでとうございます。
モモンガのロボットはかわいらしいだけでなく、予選グループ初戦から3つのミッションをすべてクリアした実力派!
全国大会でもモモンガたちのさらなる躍動を楽しみにしています。

推薦1校目は木更津高専Aチーム。
ペンギンがエリアCからぶっとんで行く様は爽快感がありました。
冬を越えられてよかったね!笑

推薦2校目は産技荒川Aチーム。
織姫に吹っ飛ばされた彦星が織姫に貢ぎ物を届ける…というコンセプトも素敵です。
そしてばんばんボールを織姫に投げる彦星、仕事ができる!笑
全国大会ではぜひありったけの貢ぎ物、もといオブジェクトを織姫のもとに届けてあげてください。

推薦3校目は茨城高専Aチーム。
運営委員長のコメントにもありましたが、予選ラウンドでは2試合ともど真ん中100点への見事なビタ止め着地でした!(1試合めは相手チームにカメラが向いてて何にも映ってなかったけども…)
全国大会ではエリアCからAへの架け橋も楽しみにしてます!

それにしても、エリアAからのジャンプ、そしてCからAへの帰還方法もチームによって色々でしたね〜!
ロボットの帰還は橋を架ける方式が多いかな?と個人的には思っていましたが、スロープを使ってのジャンプやゴンドラ方式というアイデアもあったりして、見ていて「ほぉ〜!」の声が止まりませんでした。

出場チームのみなさん、お疲れさまでした!
そして全国大会出場チームのみなさん、全国大会でのご活躍を楽しみにしています!

*1:ロボット2からロボット1への受け渡しが成功後

*2:ただし予選ラウンドのみ、どちらかのチームがすべてのミッションを完了しても相手チームは制限時間まで競技を継続